ANA国内線【PR】

lark6lark
by lark6lark
XML | ATOM

skin by excite
大石慎三郎「田沼意次に関する従来の史料の信憑性について」(『日本歴史』237号)
大石慎三郎
「田沼意次に関する従来の史料の信憑性について」
(『日本歴史』237号)<2>


このあと、筆者は
『国史文献解説』に掲載されている
残り4つの史料にについて、その信憑性を考察をしていきます。

まず、『続三王外記』についてですが、
これは作者について、さまざまな説があり、
また、これに似せた異本も多いことから、
よほどの考証を経たうえでないと、使用できないとしています。

次に『植崎九八郎上書』について、
この史料自体の価値は高いことを筆者は認めています。
ただし、ここでの田沼意次に関する記述について、
作者が、意次失脚後に松平定信に取り入る意図をもって
わざと中傷する文章を書いた可能性を指摘して、
この史料をもとに意次の実像を探ることは
成し難いとしています。

といいますか、この作者は、松平定信の失脚後、
こんどは逆に、松平定信を批判する『牋策(せんさく)雑収』
という書物を将軍家斉(いえなり)に提出しています。(ノ∀`)

『甲子夜話』(かっしやわ)については、
この本の作者、平戸藩主松浦静山が
反・田沼派である松平定信一派と、深い関係にあることを指摘し、
さらにこの本自体が、
作者の古い記憶を頼りに書かれた随筆であることも考慮に入れ、
意次を語るに当たっては
やはり信頼できる史料ではないとしています。

ちなみに作者は隠退後に『甲子夜話』を書き始めていますので、
意次の記述は、30年以上昔の思い出を頼りに書いていた事になります。

最後に『伊達家文書』に記述されている
意次の賄賂収賄の問題については
この賄賂を渡した伊達重村という人物に焦点を当て、
この人物自体、異常な猟官運動を行っていた人物であると主張し、
当時の一般論に置き換えられる話ではないとしています。

また、この史料には意次だけではなく、
当時の幕府実力者、松平武元(たけちか)
大奥の実力者老女、高丘(たかおか)にも
同じように賄賂が渡されている記述があるのですか、
それを無視して、さも、
意次のみ賄賂をうけとっていたかのように主張してきた
従来の意次評価を批判しています。



# by lark6lark | 2008-07-23 18:58 | 参考文献
大石慎三郎「田沼意次に関する従来の史料の信憑性について」(『日本歴史』237号)
大石慎三郎
「田沼意次に関する従来の史料の信憑性について」
(『日本歴史』237号)<1>


筆者がこの研究で述べたいことは、
それまでの田沼時代の研究で
使用されてきた史料の信憑性について再度の考証が必要である
との指摘です。

これの発表当時、田沼意次を評価するに当たり
大多数の人が目を通していた著書は
辻善之助『田沼時代』と、徳富猪一郎『田沼時代』でした。

その2つの著書の中で、使用されていた主な史料は

『続談海』
『続三王外記』
『甲子夜話』
『伊達家文書』
『古今百代叢書』
『実説夢物語』
『江都見聞集』
『植崎九八郎上書』

でした。

筆者はこのうち、
遠藤元男・下村富士夫編『国史文献解説』
に掲載されている史料かどうかで
信憑性についての、最初のふるいをかけています。

結果、『国史文献解説』に掲載されている史料は

『続三王外記』
『甲子夜話』
『伊達家文書』
『植崎九八郎上書』

の4つになり、
残りの半分はここでその信憑性が疑われる結果となりました。

# by lark6lark | 2008-07-23 18:57 | 参考文献
山田忠雄「田沼意次の失脚と天明末年の政治状況」(『史学』第43巻 第1・2号)
山田忠雄「田沼意次の失脚と天明末年の政治状況」
(『史学』第43巻 第1・2号)<1>



この論文は、意次が老中を罷免された前後の
幕府内部における確執を説明することを主眼としています。

筆者はまず、意次失脚の前提として、
社会的矛盾が噴出し、封建体制が危機に突入していた
宝暦-天明期の社会状況に注目しています。
そのような、封建体制の危機時、
天明6年(1786年)に意次が「貸金会所(かしきんかいしょ)」
の令を出したことが、支配者側の階級的恐怖を高め、
このことが意次失脚の大きな要因であったと主張しています。

この「貸金会所」というのは、
諸国公私領を問わないで、さまざまな階層から一律に融通金を徴収し、
それを元手資金として、大名に貸付け、
その大名からは将来利子付きで回収しようとする政策でした。
つまり、日本全国の民衆からお金を徴収するということです。

これの問題点は、
そもそも幕府が賦課(ふか)を徴収できる範囲は
幕府直轄の領地に限られていたことです。

言い換えると、幕府領地以外の土地から賦課する権利は原則としてありませんでした。

この原則を無視して、幕府・大名の支配領域に関わらず
全国的な規模で全ての階層から、賦課を徴収するということは、
幕府の経済政策を全国的に貫徹させることになります。
つまり、このことは、幕府支配の全国一円化を意味します。

これは、まがりなりにも自治をしている諸大名にとって
反抗すべき政策であり、
また、「全国一円化の政策」というものは、
逆に全国的な規模で、農民らが階級的に結集して
蜂起する可能性を高めます。
このことが支配者側の階級的恐怖を異常に高める結果となったと
筆者は指摘しています。
# by lark6lark | 2008-07-23 18:57 | 参考文献
< 前のページ 次のページ >